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第48話 恐れていたこ④
終わった……。
全身の力が抜け、その場に膝から崩れ落ち頭を項垂れた。
終わってしまった……。
今まで僕が一番恐れていたことが、最悪な形で訪れて、最悪な結果になってしまった。
どうにかならないのだろうか?
どう考えても、どうにもならない。
サイモンがいなくなる。
こんなこと容易に想像できたことだったのに、どこかで人事みたいに考えていて、いざそれが現実になってしまって、その時はじめて自分事になった。
なのに突きつけられた現実が受け止められなくて、涙も出ない。
体は生きていても、もう心は何も感じない。
ある場所にレオナルドという人がいて、その人を遠くからその人をみつめている。そんな感じがする。
けれど現実の僕は、ただ床に轢かれた上等の絨毯を、見つめてるだけ。
見つめていても、何も現実は変わらないのに……。
そんな時、視界の隅に豪華な靴が見えた。
「顔をあげよ」
頭の上からルーカス様の声がした。
ルーカス様の命令。
頭を上げようとしたけれど、頭が大きな石のように重く、動けない。
「あげよと言っている」
何も言わず微動だにしない僕に対して、ルーカス様の声に苛立ちを感じる。
懸命に頭を上げようとしたが、上がらない。
すっとルーカス様がしゃがむ気配がし、無言で顎をグイッと無理ありあげられる。
「で、これからどうするつもりだ?」
テラスで会った時の優しい眼差しではなく、酷く冷たい視線が突き刺さる。
「……」
「行く当てはあるのか?」
「……」
「聞いているのだが?」
「何も……、決まっていません……」
自分から遠くに行くと行っておきながら、何の計画も立てていなかったことが、恥ずかしい。
「サイモンと番になるのか?」
その言葉がズキンと胸を刺す。
番になりたい。でもあんなにサイモンを傷付けて、今更何を言える?
また黙りこくってしまった僕を見て、ルーカス様は大きなため息をつき、
「今回、サイモンをここに呼んだのんは、サイモンが本当のことを知っているのかを知りたかったからだ。そして問いただすと、サイモンはお前が『死んだのはレオだ』と言った時から、お前がミカエルのふりをしていると気づいていた。気づいていたにもかかわらず、陛下にお前を『ミカエル』だと紹介し、騙したんだ。これはれっきとした重罪だ。サイモンには何かしらの処罰が降るだろう」
「!!」
考えもしないことだった。
僕がサイモンに嘘をつく。
そのことをサイモンが知らずに皇帝陛下に僕のことをミカエルだと紹介して、もし陛下に僕がレオナルドだと知られても、僕だけの責任で処罰される。
でもサイモンは陛下に僕のことを紹介した時には、僕の嘘を見抜いていた。
だからサイモンも陛下に嘘をついたと処罰されてしまう。
迂闊だった。
僕はサイモンにだけ正体がバレなければいいと思っていて、それ以上のことを考えられていなかった。
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