2 / 102
第2話 苦学生⁈
俺は一応学生だ。苦学生?
学費は親に出してもらったから、生活は自分でやらなくちゃ。親元を離れて一人暮らしだ。
この辺りには大学は一つしかない。
「あの彼も同じ大学か?」
いい身分だな。仲間と飲み会か。女の子も一緒だなんて、陽キャの集団か?
根暗の俺とは違う人種だ。
「フン、羨ましくなんかねえぞ!」
一人でムキになっている自分が滑稽だ。
毎朝、一人で起きて、朝食と昼飯を作る。
炊いた米を茶碗に盛った。納豆と即席の味噌汁。
残りのご飯を二つに分けて握る。
ラップに海苔を敷いて、飯を平らに乗せて、昆布の佃煮を芯にして二つ折り、ラップごと三角に握る。もう一つはばあちゃんの梅干し。実家の梅の木になった梅だ。
減塩なんかじゃない。塩っぱくて、酸っぱい。
本当の梅干しだ。
海苔にはこだわりがある。湿気ないように最善の注意を払って管理している。といっても、100円均一の海苔専用容器に、口をしっかり止めて保存しているだけだ。
富津産の寿司海苔。ちょっと高いが最高に美味い。昨晩、目をこすりながら、仕上げたレポート、とおにぎりをリュックに詰めてパーカーを羽織って、いつもかわらない、朝の風景。
途中にあるスタバを横目で睨んで通り過ぎる。
コンビニの100円の淹れたて珈琲を買つて、自転車で大学に向かう。
いつも目で彼を探してしまう。偶然なんてそうそうあるわけもない。でも、それがささやかな俺の楽しみなんだ。
「はよーっ!夢見るチェリーボーイ!」
うるさい、クラスメイトの片岡徹司が声をかけて来た。こいつは地元の高校から一緒だった。
こんな大した事ない田舎の学校に一緒の奴がいるのは奇跡だ。
「おまえだってチェリーだろ。
声がでかいんだよ。」
「後でおまえのアパートに行っていいか?
これ、聞きたいだろ。」
俺の好きなバンドのCDを見せた。
ともだちにシェアしよう!

