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第2話 苦学生⁈

 俺は一応学生だ。苦学生? 学費は親に出してもらったから、生活は自分でやらなくちゃ。親元を離れて一人暮らしだ。  この辺りには大学は一つしかない。 「あの彼も同じ大学か?」  いい身分だな。仲間と飲み会か。女の子も一緒だなんて、陽キャの集団か?  根暗の俺とは違う人種だ。 「フン、羨ましくなんかねえぞ!」  一人でムキになっている自分が滑稽だ。  毎朝、一人で起きて、朝食と昼飯を作る。 炊いた米を茶碗に盛った。納豆と即席の味噌汁。 残りのご飯を二つに分けて握る。  ラップに海苔を敷いて、飯を平らに乗せて、昆布の佃煮を芯にして二つ折り、ラップごと三角に握る。もう一つはばあちゃんの梅干し。実家の梅の木になった梅だ。  減塩なんかじゃない。塩っぱくて、酸っぱい。 本当の梅干しだ。  海苔にはこだわりがある。湿気ないように最善の注意を払って管理している。といっても、100円均一の海苔専用容器に、口をしっかり止めて保存しているだけだ。  富津産の寿司海苔。ちょっと高いが最高に美味い。昨晩、目をこすりながら、仕上げたレポート、とおにぎりをリュックに詰めてパーカーを羽織って、いつもかわらない、朝の風景。  途中にあるスタバを横目で睨んで通り過ぎる。 コンビニの100円の淹れたて珈琲を買つて、自転車で大学に向かう。  いつも目で彼を探してしまう。偶然なんてそうそうあるわけもない。でも、それがささやかな俺の楽しみなんだ。 「はよーっ!夢見るチェリーボーイ!」  うるさい、クラスメイトの片岡徹司が声をかけて来た。こいつは地元の高校から一緒だった。  こんな大した事ない田舎の学校に一緒の奴がいるのは奇跡だ。 「おまえだってチェリーだろ。 声がでかいんだよ。」 「後でおまえのアパートに行っていいか? これ、聞きたいだろ。」  俺の好きなバンドのCDを見せた。

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