3 / 102

第3話 見つけた?

 眠たい講義が終わって徹司と合流した。別の講義をとっていたが終わる時間は同じだったらしい。自転車を押して大学の敷地を歩いていた。 「あっ、あいつ。」 「誰?」  俺は見つけた。あの引っ詰め団子の男。名前がわからないから、ダサい呼び方をしていた。俺の頭の中だけの問題だ。 「知ってんの? 女子にモテモテの検見川零士。」  徹司は俺と違って交友関係が広い。 「けみがわれいじ?」 「そう、俺たちより2個上だよ。一度社会に出てから受験した。看護科だよ。」  俺と徹司は情報工学だった。あまり深く考えないで、これだったらなんとか就活も出来るだろ?ってな考えだった。最先端科学を学ぼう、なんて思ってた。 「看護科って女子の巣窟だよな。」 「この頃は男子も多いんだよ。現場では男性は引く手数多だからね。」 (すごい、生き方にポリシー持ってんだろうな。 苦手だ。)  自分の生き方のヌルさを恥じた。  帰って来て徹司とCDを聴いた。 もっぱらJAZZだ。 「今時、CDを買うんだ? ダウンロードとかすればいいじゃん。」 「俺はジャケ買いなの。 ホントは昔のLPレコードが良かったけど。 CDじゃ小さいもんな。」  徹司は、お坊ちゃんだから、こだわりがある。 趣味に金をかけられる立場だ。 「なあ、あの検見川ってどうよ。 看護科だって?看護師目指してるのか?」 「おまえ、あいつのことばっか話すな? 惚れたか?」 「何言っちゃってんの。男だよ。」 「いいじゃん、男だって。 でも彼は、超モテ君だからなぁ。」 「ああ、俺のバイト先に来た時も女が離れなかったよ。女,見る目ねぇよ、あいつ。  ひでぇ女に引っ付かれてた。」 「おまえ、ずいぶん気にしてんな。 やっぱ、惚れたか?」 「いや、しっかりした考え持ってんだなって、思った。看護師かぁ。厳しい仕事だ。」 「変わり者だな。うちの大学、薬学もあるんだよ。そっちは男も多いのに、な。」

ともだちにシェアしよう!