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第9話 女友達
「草太ぁ!」
昼休み、大声で俺を呼ぶ女子の声。滅多にない事だ。今まで、彼女がいたこともない。
徹司なんか、女取っ替え引っ替えだった高校時代。俺は帰宅部。ばあちゃんの畑、手伝ってた。
そんな俺を呼ぶ声がする。美咲ちゃんだ。
「ご飯、行こ!」
「俺、外食はしないんだ。」
ホントは金が無い。
「私バイト代入ったから、奢るよ。
いつもおにぎりもらってるし。」
あれ以来多めに飯を炊くようになった。朝、おにぎりを4個作る。なぜか、昼食を美咲ちゃんと一緒に取ることが増えた。
「他の友達と行きなよ。俺なんかといると
彼氏に叱られるよ。」
「あーあ、草太はつまんない奴だな。」
「美咲ちゃんの彼氏なんでしょ、検見川零士。」
「そんなわけないじゃん。私の片思い。
幼馴染みなんだけど、もう15年も片思いだよ。」
美咲ちゃんは子供の頃の零士を知ってるんだ、と変な所で感心してしまった。
学部が全然違うのに、美咲ちゃんはよく俺を誘ってくれる。
たまに零士を見かけてもガン無視される。
店に徹司と行った事がよほどイヤだったみたいだ。この前、零士を見かけてボーッと見惚れてたら近づいて来て胸ぐらを掴まれた。
「テメェ、言いふらしてんじゃねえぞ。」
ドスの効いた声で脅された。
(零士ってめちゃ性格悪いじゃん。
俺の目が曇ってたな。
あんな奴に興味ねえよ、俺だって。)
心の中で悪たれた。
美咲ちゃんといる事が多くなって、付き合ってる?なんて噂が出た。
学部が違うから、忙しさも全く違う。わざわざ一緒に昼飯を食う必要はない。
「草太、冷たいね。」
「美咲ちゃんは友達たくさんいるでしょ。
俺なんかに合わせてくれなくても。」
毎日梅干しのおにぎりだけ、なんてしょぼいよな、俺。
「別に誰でもいいんだ。ご飯食べるくらい。」
「零士君は誘わないの?」
「草太は何も知らないんだね。
私の片思いって言ったけど、そんなに執着してるわけじゃないの。
零士には恋人がいるから。」
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