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第10話 零士の性癖

 徹司が俺を探して声をかけて来た。いつも複数の彼女がいるので忙しい奴だ。 「おい、草太、すごい事、聞いたんだ。」  零士の事だった。 看護学の秋吉教授の愛人だと言う。 「秋吉教授って男だよ。」  それで2年遅れでこの大学に入ったんだそうだ。 (暗い出口のない所に閉じ込められている。 俺はここから出られない。)  零士は時々、自分をコントロール出来なくなる。秋吉が、無理矢理自分のそばに置こうとした。大学になんて興味無かった。 (秋吉が俺の自由を奪うんだ。)  頬を張られた。目が覚めた。鎮静剤で眠っていたのか。 「起きたか?また,発作だ。」  秋吉教授。零士の見張り役。 到底看護師にはなれない、精神疾患がある。 秋吉教授は自分の所に囲い込みたかっただけだ。  成績は良かったから試験を受けて入学は出来た。看護師になんかなれるわけがない。 情緒不安定。  ただ、自分の手元に置きたかった秋吉の庇護のもと、ここにいる。 (俺は逃げ出したい。。そのための金だ。 金を稼ぐ。)  夜、抜け出して働いた。見つかって脅された。 「零士、措置入院するかい?」  精神病院に主治医の判断で入院させる事ができる。 (狂っているのはこの人の方だ。)  高校生の頃、精神科に通った。その時の主治医が秋吉だった。  零士に異常な程の執着を見せた。全ての手続きを彼が代行してしまった。  幼馴染みの美咲だけが話せる友達だった。 「青春をさせてあげよう。私の目の届く所で、ね。」  親もみんなこいつに騙されている。逃げられないわけでは無かった。真綿で首を絞めるようにがんじがらめにされていた。  性の喜びを教えてくれたのも、この秋吉教授だった。高校生の零士に、男色を教え込んだ。

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