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第11話 待ち伏せ
午後の講義がずれ込んで遅くなってしまった。
自転車を押して帰る所だった。
外は薄暗い。人影も少ないB棟の裏。授業がない時に近寄る奴はいない。
(午後中、プログラミング言語基礎と基本構成で頭が固まった。数理解析や計算物理学、俺向いてないよ。疲れたぁ。)
徹司だったらこういうの、軽々とこなす。今日は来ていなかった。
トボトボと自転車を押して歩いていると、あの零士にぶつかった。文字通りぶつかって来た。
「あっぶねえな。何だよ。こんな薄暗い所で。
俺を待ち伏せか?」
冗談のつもりで言った。
「そう、待ち伏せしたんだ。
おまえに会いたくて。」
「は?何言っちゃってんの?」
馴れ馴れしく肩を抱かれてどこかへ連れて行かれる。
「俺に興味あんだろ。俺ん家、来いよ。」
駐車場に連れて行かれた。車に乗り込む。
(こいつ、車なんか持ってんの?)
黒のフィットに乗せられた。ハイブリット車だ。コンパブのショーで稼いでるのか?親が買ってくれるのか?そんなことを考えてたらタワーマンションに着いた。
「こんな所に住んでるのか?親が金持ちなの?」
零士は返事をしない。
「感じ悪いな。俺、帰るよ。」
「いいから、来いよ。」
エレベーターで上の階へ連れて行かれた。
さっきから俺は全く自分の考えがなくて、言いなりになっていることに腹が立って来た。
「おい!どこ行くんだよ。」
かなり広そうな部屋に着いた。内装がリッチだ。
「ここ、おまえの家?」
「そうだよ。入れよ。」
広いリビングに通された。
「家族は?」
「いない。腹減ってないか?」
「ああ、減ってるな。」
「何か取るよ。ピザでいいか?」
スマホで注文している。
冷蔵庫を開けてワインを取り出した。
グラスが二つ。ソファを勧められた。
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