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第15話 魔性の零士

 マスターの情報だけでも、朧げながら見えて来たものがあった。  秋吉教授はサイコパスだ。過去に彼の罠に嵌まった者は数知れず、らしい。精神を操るから犯罪にならない。  零士の魔性も作られたものかも知れない。 ハニートラップと言うのではない。お互いに本気なのだ。  夢のような時間。一緒にいる時は、あっという間に過ぎて行く。 「草太、手を離さないで。」  消えてしまいそうな儚さと、貪欲な性への欲求。壊れそうに繊細で、しかし、尽きることのない性愛。疲れを知らない強靭な身体に溺れる。  草太の充実した逸物を奥まで飲み込む。死ぬほどの快楽を隠さない。 「草太、一緒にイコう。抱いていて。 離さないで。ずっと繋がっていたい。 一つになりたい。」 「零士、一緒だよ。どこまでも一緒にイコう。」  愛らしい恋人たちだ。 これを自分が操っている、と陰でほくそ笑んでいるサイコパス。秋吉教授は自分は正常だ、と思っているが、多分一番狂っているかも知れない。  贅沢が身についた零士は、金がかかる恋人だった。草太はあのボーイズバーでストリップをやる零士が許せない。寛大な恋人には、なれない。 「もしもし、ばあちゃん、草太だよ。 少し銭こ(ぜんこ)貸して欲しいんだ。」  ついに田舎のばあちゃんにまで電話してしまった。 「あいやぁ、すんぱい(心配)だこと。 どうすべぇ、米の中さ、入れて送るか? 封筒さ、入れてしっかり閉じれば。  待ってな。」  ばあちゃんは急いで送ってくれた。郵便局の封筒に入って50万円、送られて来た。 「零士、何か美味しいもの食べに行こう。」  高級な零士行きつけの店に行った。 (俺はもう、未来なんか信じてないんだ。 今、零士といられれば、明日の事なんか考えたくない。)  それでも日々は続いて行く。草太には何も見えていなかった。  徹司にあのジャズバーに連れて行かれた。

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