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第19話 零士の住まい
「零士はどこに住んでるの?」
以前連れて行かれたタワマンは、誰かの家だったろう。たまたま好きに使わせてもらっただけだ、と草太にもわかる。
それから大学に近いあの低層マンション。一等地に建つ低層の建物はかなり贅沢だ。
どちらにしても学生の身で家賃が払えるとは思えない。
乱暴に脱ぎ捨てられたジーパンは、かなり古そうだった。
「使い捨てじゃないじゃん。
このジーパン、かなり古いよね。」
「ああ、それビンテージなんだ。
百万くらいした。洗わないよ。」
気に入った物は捨てたりしない、と言った。
風呂から上がって草太のバスローブを羽織っている。草太が脱ぎ散らかした服を拾って畳む。
「これ、もう一回着るだろう?
さすがに着替えは持って来てないよね。」
いつも手ぶらで必要最低限の物をポケットに入れている。
脱いだ時に落ちた財布を拾って、服の上に置いた。
「何が入ってるんだ?」
「見てもいいよ。」
無頓着に言うので興味津々に財布を手に取った。長財布。
中には数枚の札と何かのレシート、紙切れと写真が一枚入っていた。
それと、ごく薄い、何かのカード。
カードキーか。
「これだけ?」
「そう、俺の今の全財産。」
写真に手を伸ばしたら取り上げられた。
「これは見ちゃダメな奴か?」
「そうだな。」
「おまえの家の鍵はこれか?」
カードキーを手に取った。
「これはGPS付きだ。盗聴器内蔵だから、全部、聞かれてる。」
声を潜めて言うのが、冗談には見えない。
「マジ?」
「大マジ。」
首に抱きついて本気の声で言う。思わず見つめてしまった。カードキーの上にその辺にあった座布団を乗せた。音を拾えないように。
零士を抱きしめて、囁き声で
「おまえは何を背負ってるんだよ。
秘密が多すぎる。俺を騙しても面白くないぞ。」
草太は零士を抱きしめて、
「何か、困ってるんじゃないのか。
俺に出来ることはないのか?」
細い肩を抱いた。
「おかしいよ。おまえを縛ってる奴がいるんだね。」
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