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第23話 若頭

 指定暴力団T会、若頭、安藤陸は、ゲイだった。それも、受け。凶暴なネコ。 『ボーイズバー ジュネ』を任されている。 そして、零士にマジ惚れしている。浮気な零士を理解しようと、全てを許している。  あの秋吉が、最初に零士に目を付けた。 そして陸に貢ぎ物にしたのだ。 「若頭、この子は特級品ですが、少し問題があります。情緒不安定なので。」  秋吉は、この辺りの裏社会を牛耳っている安藤に取り入ろうとした。  一応大学教授なのだが、管理を任されている薬品を安藤の組に横流しして,大金を得ているズブズブな関係なのだ。 『ボーイズバー ジュネ』はヤクザが経営する店だった。半裸で踊るモデルの男たちは、ほとんどをタイからスカウトして来た。タイには美貌の男たちが多い。 「ニホン行きたいデス。 ニホンいい国、稼げるネ。」  違法な事をさせる訳ではない。本人たちも喜んで来日した。日本人も数人いる。  陸の厳しい審美眼で選んだイケメンマッチョな男たちだ。  ここで踊る事は、マッチョの登竜門になっていて、その業界では有名だ。 「バンコクでも有名ネ。ジュネ。 日本の店で踊るのは、ハクが付くネ。」  きちんとワーキングビザを取得した者たちだけがこの店で雇ってもらえる。  それでもヤクザ経営の店だ。4課が張り付く。 ネックは違法薬物だ。  そんな経緯で零士はこの店で働いている。秋吉に売られたようなものだ。超わがままな零士。  若頭の寵愛を受けてわがままは加速する。 「零士、疲れたろう。おまえの裸を人に見せたくはないんだよ。」  いつも仕事を辞めろ、という。陸は零士を離したくない。独占したい。 「嫌だよ。あんたに飼われるのは。 忠犬がお望みなら、他のやつ探せよ。」  いつもどこかに行ってしまう。 会えた時には、どこでも盛って声を嗄らす。  陸も、裸で抱き合っている零士に負けない綺麗な男だった。その背中には見事なマリア観音。珍しい刺青だった。  広尾の先代彫り武の作だ。先代彫り武のマリア観音を背負っているのはこの世にただ二人。偶然だったがもう一人はサリナという。  蒲田を仕切っていたマコさんの娘。今はもう時代も変わった。昔語りはやめよう。  陸はサリナに会った事はない。女に興味がない。

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