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第27話 再会
徹司は好奇心からバックステージへ行ってみた。
「お客様、ここから先はスタッフだけしか入れません。席にお戻りください。」
蓮たちより強面のドスの聞いた黒服に止められた。
「店長か、責任者いるかな?
風営法に抵触してるんじゃないか?」
「あんた、何者?4課なら話は通ってるよ。」
「ちょっと漆山さんに話ししようか?」
「県警の本部長、お知り合いですか⁈」
「まあ、野暮な事は言わないさ。
ちょっとさっき踊ってた子に会わせろよ。」
吉田さんは古巣の県警本部長の名前を出した。
黒服は少しビビって若頭の陸を呼んだ。
「えっ?吉田⁈久しぶりだなぁ。
高校の時、おまえに負けて空手辞めたんだよ。」
「ああ、こんな所で会うとは、な。
安藤は極道になったんだったな。」
「吉田は警察官になったんじゃ無いのか?
辞めちまったか。」
「どうしてわかる?」
「サツカンの雰囲気じゃねぇな。」
徹司がおずおずと口を挟んだ。
「あのう、知り合いですか?」
「高校の同級生だった。」
「極道がケツモチやってんじゃ碌な店じゃねぇな。」
「吉田は何やってんだよ。」
「今はしがない個人事業主だ。」
すごい偶然だった。高校の時、陸が初めてケンカに負けた男だった。初恋だった。もちろん告白なんかしていない。思いは胸にしまっていた。
陸は極道だ。なるべくしてそうなった、そんな男だ。
「吉田、おまえこんな店に来るんだな。
男の裸が見たいのか?」
「違うよ。仕事だ。」
名刺を出した。
[松田探偵事務所 調査員 吉田征一]
「へえ、松田さんの所か。」
「知ってんのか?」
「県警OBの松田さん。この辺の筋モンで知らない奴はいねえよ。泣く子も黙る松田恭太。
あの人に付いてるなら、無碍な事はしねぇよ。
奥の事務所にどうぞ。」
徹司の知らない世界だった。店の奥はヤクザの事務所。入り口にずらりと並んだ提灯。組の名前が入っている。
でかい机の後ろに墨痕黒々と額に入った「誠」の一文字。
「絵に描いたようなヤクザの事務所だな。」
「陸、俺に会いたかったか?」
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