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第28話 貫禄

 徹司は、場違いな所に来てしまった、と後悔した。吉田さんはすごい貫禄だ。 (俺、こんな人に仕事を依頼したのか。) 「あの、零士はどこに?」 「ああ、今呼んで来ます。」 黒服が出て行った。 「吉田、積もる話があるだろう。 そちらの方が良ければゆっくりして行ってください。今、酒運ばせるから。」  ソファを勧められて帰るタイミングを逸した。 「この店はヤクザが仕切ってるんだな。 陸は若頭だって?出世したもんだな。」 「気がついたらドップリ、嵌まってたよ。 吉田はなんで警察辞めたんだ?」 「俺も型に嵌められるのが向いてなかったって事だ。」  徹司は我慢できずに口を挟んだ。 「零士って言う人の事を聞きたいんです。」 「ああ、零士は最近入ったダンサーだ。 いいだろ、あいつ。」 「あんなエロい事させてんのか?」 「あいつが勝手にやってんだよ。根っからのダンサーだ。」 「縛ってる物はなんだ?金か?」 「違うな。金には興味なさそうだ。 俺が気に入って全部面倒見てる。」 「零士には恋人がいるんだ。」 「ほおー?女?」 「いや、男。」 「恋人はゲイか?吉田はノンケだったな。 こちらの方がその恋人?」 「ち、ちがいます! 俺は幼馴染で、友達が零士と付き合ってるんです。」 「それで、骨抜きにされた、とか、か?」 「まあ、当たってます。」 「奴ほどの美貌だ。惚れる男は多いだろう。」 「陸はどうなんだよ。おまえも惚れて囲ってんじゃねえのか?」 「ああ、話を戻そう。  あいつは、訳ありで連れてこられた。  以前から、美少年の売買ルートがあるらしい。 ウチの組はそう言うのは御法度だけどな。  零士は違うな。秋吉ってのが連れて来た。」 あの教授が一枚噛んでいる。陰で何やってるかわからない。 「俺が知ってるだけで、薬物横流し、少年誘拐、 盗聴、盗撮、恐喝まがい、監禁。  十分逮捕状が請求出来るやつばかりだ。 ウチの組はもう関わらない。上からお達しが来ている。そのウチ,消されるぞ、秋吉とやら。」  大学の闇だ。徹司は、一学生に出来る範疇を超えている、と思い知った。  草太が知ったら、諦めるだろうか?

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