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第30話 働く
草太があの『ボーイズバー ジュネ』で働くことになった。胸の腫れは引いて綺麗な薔薇が出現した。
店の面接で、上半身裸になって陸に指摘された。
「あーあ、身体を汚しちゃダメだよ。」
と叱られた。陸が
「おまえ、零士の恋人なの?こんなの入れちゃって。この前、おまえの友達が来たよ。」
「えっ?友達?ああ、きっと徹司だ。」
徹司から、零士が恋人だ、と情報が入っていた。目の前の男は、何だか可愛らしい奴だった。
陸はいじめたくなる。困らせて泣かせたくなる。そして優しく慰めてやりたい。
草太は嗜虐的な気持ちにさせる奴だった。
零士が迎えに来る。
「意外と面倒見がいいんだな。」
「俺の恋人だから。秋吉に言わないで。」
秋吉は切ったから、もうこの辺りをうろつく事はない。が、安心させてやるのはちょっと面白くない。
「秋吉は大学で会うんじゃないのか?」
「今はほとんど大学に行ってないから。」
「二人ともダメだよ。草太は卒業しなよ。」
陸は高卒だから、しきりに勧める。
「ヤクザのくせに学歴、大事だと思うんだね。」
「ああ、ヤクザは潰しが効かねえからな。」
「は、真面目か。」
それでも、見た目可愛い草太は姫たちに人気が出た。店で指名が入り始めた。
まだモデルとしては使えない。蓮とシンが親切だ。
「草太はマッチョになりたいの?
可愛い系で行けるよ。」
店では慣れないスーツを着たが、似合わない、と零士が衣装を選び出した。
薄い生地でゆったりしたシャツ。あの胸の薔薇が透けて見える。お客さんが手を入れて薔薇を触りたがる。零士に見つかると帰ってからお仕置きが待っている。
この店はお触りOKでお客の女性が積極的だ。
「ねえ、草太は、枕、しないの?」
鬼枕、と言われている先輩キャストに呼び出されて腕に煙草を押し付けられた。皮膚の焦げる匂い。熱くて痛い。
帰って零士に見つかって酷く叱られた。零士の怒りは中々おさまらなかった。
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