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第40話 病気
「零士に勝手に病名をつけて社会不適合者にしてるのは秋吉って医者だ。」
陸は、零士の身辺を探る、吉田から話を聞いた。草太を心配して吉田に調査を依頼した徹司の話だった。
吉田は陸の盟友だった。空手で負けて以来、陸が一目置いて来た男。
「確かにあの秋吉ってのは信用出来ないな。
ウチの若いもんにシャブを勧めて来た過去がある。それで出入り禁止にしたんだ。
捜査4課に張り付かれたのも、奴のせいだ。
ウチはヤクは御法度だ。頭がイカれちまうと厄介だ。セックスなんて可愛いもんだ。」
吉田が
「陸の同業で、兄貴が精神科の医者をやってる奴がいる。佐波一家だ。
舎弟頭、虎ニってのを知ってるか?」
「ああ、あそこなら若頭の若松を知ってるよ。
虎ニは、佐波大門の次男だろ。」
「そう、長男が精神科医なんだよ。
佐波龍一。優秀な男だ。こんな田舎の三流大学の教授とは格が違う。」
「極道の息子なのに優秀だと言われてんのか?」
「海浜病院の大介先生も一目置いている。」
その佐波龍一医師に零士を診察してもらおうと言うのだ。
陸はその話に飛びついた。零士は奔放な男だが、病的ではない、と感じていた。
零士のトラウマを解いてやりたい。佐波龍一に、吉田が声をかけてみる事になった。
「龍一、なんかご招待が来てるよ。
『ボーイズバー ジュネ』だって。
結構田舎だな。おもしろそうだ。」
虎ニがやって来た。
「知り合いの、同業で安藤陸ってのがいるんだ。
以前、ちょっと面倒な仕事を頼んだ吉田征一っていうのの、紹介だ。」
陸は極道だが、筋を通すいい男だ、と言う。
「若松が知ってる人だって?」
そばに控えていた若松が
「安藤陸はいい男です。
今は怪しいボーイズバーなんかやってますが、
触法はしません。」
確かに触法する組織なら、吉田は紹介しないだろう。元警察官だ。
「龍一兄貴に、診察してほしい男がいるんだって。」
「病気なのか、頭の?」
「その言い方、やめてよね。偏見。」
「サチリアジスだって?」
龍一は絶句した。
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