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第44話 問診

「ずっと神経症だって、高校の頃から。 心療内科に通院させられて、俺はあまり真剣に取り合わなかった。面倒だから適当に答えてた。」  零士は問診に答えた。龍一が好みのタイプのイケメン先生だったから、まじめに答えようと思った。  高校生の頃から、毎日が鬱屈した日々だった。 外見だけで女の子が寄ってきた。 「片っ端から寝たんです。 あまり、女の子は好きではなかったけど、やらせてくれたので、遠慮なくいただきました。」  その女の子や保護者から苦情がたくさん来て、閉口した親に心療内科に連れて行かれたという。 「そこであの秋吉教授が主治医になってから、いろんな事が起こった。  今ならわかる。アイツはただの変態。 サイコパス野郎だった。俺は被害者だ。」  強すぎる性欲だ、と病名を付けられた。 「俺はただ、自分に正直だっただけなのに。」  本気の恋がしてみたい、と思うようになった。 いつも、誰かとセックスだけでなく心から愛し合いたい、と願っていた。 「人を好きになっても、めんどくさくなるんだ。 それが病気だって。ただの色情狂だと安易な診断をくだされた。」  誰も信用できない。誰も愛せない。 龍一は秋吉の医師免許を剥奪したいと思った。  患者の人生を狂わせた。狂っているのは秋吉本人だ。他にも被害者はいるだろう、と思える案件だ。 「零士君はどうしたいの?」  自暴自棄になってこんな男娼まがいの仕事をしている。 「ストリップは嫌いじゃない。みんな劣情をもようして俺を見に来る。  女性客の中には、本当に俺を愛してくれそうな人もいる。穏やかな愛が欲しい。  それなのに、俺自身が乱暴に激しくしてしまう。俺は男が好きだ。  グニャグニャしたものは嫌いなんだ。」  話を聞いて龍一は大いに共感した。多分、貴也なら理解を示すだろう。共通の思いを持っている人間は少ない。ゲイに走るきっかけだ。  龍一は同性愛は病気ではない,と知っている。 精神科医の中には、それを病気だと言い出す輩が一定数存在する。  そして精神的に追い込む。 「零士は普通だよ。マトモだ。健康な男の性欲だ。恋人がいるんだろう。愛しているのか?」

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