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第45話 診断

 簡単な店での問診。それで確実なことがわかるわけではないが、そもそも精神科の診断に確実も何もあるわけが無い、というのが龍一の持論だった。脳波の検査とか、精密な機器を使って僅かな揺らぎで病気と診断するのは無理がある。  面と向きあってその言葉や逡巡を捉えなければ人となりはわからない。  患者は確実さを求める。全体的に見れば,人は皆、多かれ少なかれ狂っているものだが。 「貴也、どう思った?」 「俺はサチリアジスは誤診だと言い切っていいと思うね。医者の責任で十字架を背負わされたようなものだ。訴訟ものだよ。」  龍一も同じように感じていた。 「もう一度、落ち着ける所で診察してみたい。」 「俺も助手で行くからね。」  貴也が焦って言った。 龍一が笑って抱きしめてくれた。  龍一に問診してもらった夜、草太は眠れなかった。二人のこれから,が見えない。  零士が草太の狭いアパートに泊まった。 「草太、二人の部屋を探そうか。 ここは狭いだろ。大家さんにも許可もらってないしね。」 「えっ!本気で一緒に暮らすの?」  零士は考えていた。自分はどんな暮らしがしたいのか。いつも将来の事を考える時、草太がそばにいる。一緒なのが当然だと思っている。 「草太を幸せにするにはどうすればいいんだ?」  今まで二人でそんな話をした事はない。 草太の部屋で抱き合って、ゆっくりしている事なんかなかった。  いつもせっかちな、貪るようなセックスばかり。静かに愛し合うなんてなかったかもしれない。 「畳に布団ってのもいいな。 颯太が隣にいてくれたら幸せだ。」  昨夜の名残りで裸で抱き合っている二人。 「髪切ろうかな。長過ぎるから。」 「肩までね。俺、零士の長い黒髪が好きなんだ。」  髪をかき上げる零士の仕草にいつも見惚れている。夢心地でキスされると蕩けてしまう。 (こんな時にヤクザの陸さんを思い出してしまった。いやだな。零士が俺以外とセックスするのはいやだ。) 「どうした?草太悲しい顔は無しだよ。」  零士のキスは魔法。

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