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第51話 またいなくなる
あれから零士からは全く連絡がない。
草太はげっそりやつれている。零士が置いていった金で暮らしている。
仕事を探す事にも身が入らない。零士の心当たりもないので、たった一人共通の友人(?)美咲ちゃんに会いに大学に行った。
看護科の学部を覗いて、聞いてみた。
「N市から来てる奥田美咲さんに連絡したいんですけど。俺、情報2年の泉草太と言います。」
「あ、知ってる。キミ、梅干しおにぎりの草太くん。待って。美咲は今日は実技演習だから、病院直行で、こっちには来ないよ。
聞いてみるから待ってて。」
美咲ちゃんの携帯に電話して番号教えていいか,聞いている。
(ああ、そう言うふうに確認するんだな。)
妙に感心してしまった。
「美咲から許可もらったから番号教えるね。」
携帯番号を教えてくれた。美咲ちゃんはいい友達を持っている。
「もしもし、久しぶり。
零士の実家教えろって?」
元気な美咲ちゃんの声。経緯を話して連絡先を聞いた。実家の住所。
零士の家は、代々続く合気道の道場だった。
意外だ。そんな窮屈そうな家なのか?
訪ねて行く勇気はない。
でも、もう半月、二週間も連絡がない。
草太は会いたくて会いたくて、辛かった。
また、零士は消えてしまった。零士は草太無しで平気なんだ。草太は眠れない。
仕事しないと金もなくなる。零士の置いていった金はあまり使いたくない。
仕方がないので、またあの店に行った。
「あのぅ、しばらく休んでたんですが、また働かせてもらえませんか?」
「おっ、復帰するかい?」
あの陸がいきなり出てきて対応してくれた。
強面のイケメン。草太は慣れる事はない。いつも草太がビビる、苦手なヤクザだ。
「おまえ、ずいぶん舐めてんな。
どの面下げて来たんだよ。零士はどこだ?」
「俺にもわからないんです。
音沙汰無しで。」
「よし、働け。おまえがいたら、また、零士が顔出すだろ。楽しみだなぁ。」
(飛んで火に入る夏の虫、だって?
こいつ、わかってここに来たのか?)
「おい、蓮とシンに担当させろ。」
店に連れ出された。ヤクザの事務所よりは怖くない。あの鬼枕の人に睨まれた。
整形して綺麗な顔になっているが、鼻が少し曲がっているみたいだ。
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