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第52話 アレクサンドル・バルテルミー

 零士の実家にいるフランス人。内弟子になってもう10年も住み着いている。 「零士、僕の愛を受け入れて。 もう中学生じゃないんだよ。零士も大人になったんだろ。  フランスじゃソドミーも市民権を持っている。 愛があれば許されるんだ。」 「冗談じゃないよ。フラン、じゃなかった、アレックス、は何か勘違いしてるよ。俺はそんな趣味無いから。」 「おかしいなぁ。零士はゲイの匂いをプンプンさせてるよ。」 「おまえが変態だからだろ。親父に言うよ。 アレックスは破門だ、国に帰れって言われるよ。」  零士の母はアレックスの性癖を知っていた。 陰ながら心配していた。 「師匠はそんな事、考えもしないよ、きっと。  清廉な方だ。」 「やっぱり、同性愛は不潔だと思うんだね。 俺にも付きまとうのはやめろ!」  アレックスは零士から何かを嗅ぎつけている。 「どこで働いてたの? 大学、行ってないんだろ。  僕の友達でボーイズバーが好きな奴がいるんだ。よく行く店でおまえによく似たダンサーがいた、って言ってたよ。今度一緒に観に行こう。」  フランことアレックスは、やはりその道の交友関係が広い。アレックス自身もゲイなのだ。  零士から、やはり同類の匂いを感じているのか。夜になると離れの零士の部屋に忍んできた。 ハッと気がついて枕元のスタンドライトを点けると裸のアレックスが添い寝していた。 「おまえ、何やってんの!何で裸⁈」  アレックスの裸の股間に猛々しいモノを勃たせて迫って来る。胸毛の濃い身体を押し付けて来る。 「キモいな。やめろよ!」  片手で投げ飛ばした。 「うっ、勘弁してくれ。」 「今の騒ぎで親父が起きて来るぞ。 強制送還だな。」  アレックスは脱ぎ捨ててあった浴衣を掴んで逃げた。さすがに身のこなしは早い。  零士は一人になって布団の上に大の字になって寝転んだ。興奮してしまった。アレックスとのセックスなんか考えただけで寒気がするが、草太の身体が思い出されてつらくなった。 「会いたいな、草太。」  肝心な事は何一つ父に話していないが、草太の元へ帰りたくなった。

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