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第54話 零士のブルース

 指名してくれたお客さんを送り出して、戻ると零士がいた。  そこだけ光が当たっているように、草太の目に零士は飛び込んできた。 「零士、零士、おかえり!」  首に飛びついてしがみついた。 「待てよ。おまえ、まだ仕事中だろ。」 「零士はどうするの?どこへも行かないで。」  草太は仕事が手につかない。一ヶ月近く会えなかったのだ。また、いなくなってしまう。 「蓮、俺、今日帰ってもいいかな?」  陸から厳しく言われていた蓮とシンはダメ出しをして 「次のお客さんが待ってるよ。」  振り向くと、零士は陸に呼ばれている。 「後で、な。」  零士に頭を撫でられてしゅんとする草太。  それなりに忙しい。 「あ、草太に伝言。終わったら上のジャズバーにいるからって。」 「うん、わかった。」  上の空で接客した。それでも、姫たちは草太を気に入ってくれる。 (感謝しなくちゃ。) 「いらっしゃいませ。お待たせしました。 あなたの草太でぇす!」  ニコニコしながら席に着く。 「待ってたよ。草太もショーに参加するの?」 「はい、チップもらえるから。ズボンに挟んでくれる。草太、貧乏なんだ。」 「わあ、薔薇見せてくれたらシャンパン入れちゃう!」  草太はシャツを捲って左胸の乳首まで見せた。 「可愛い!ちょっと触らせて。」  乳首を爪で軽く弾かれた。 「ビクッ。」 「草太は感度抜群だね。枕やらないの?」  この店はお触りオーケーでかなり民度が低い。 男性も身体を目当てにされる。  乳首を刺激されてのけぞっていると、鬼枕先輩に小突かれた。 「おまえも色を売るようになったんだな。 今度の3Pに誘ってやるよ。」 「いえ、俺は結構です。」 「こいつ、ケンカ売ってんのか?」 「ごめんなさい。」 「零士のイロだからって今じゃ奴の力も無くなったんだよ。調子、扱くなよ。」  テーブルが嫌なムードになってしまった。 奥から颯爽とイケメンが現れた。 「零士!」

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