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第56話 零士のブルース 3

「いらっしゃい。バンマスが来たよ。」 「バンマス、ご無沙汰です。  何か、俺に出来るブルースありますか?」 「いきなり,なんだよ。 零士はギター続かなかったな。歌えるか?」 「え、歌?カラオケでJポップとかなら。」 「ブルースだよ。本気のブルースがやりたいんだろう。」  バンマスはギターを爪弾きながら、ブルースの歴史をかいつまんで話してくれた。 「今の音楽に影響を与えた、大きな源流の一つがブルースだ。元々ブルースは歌が主役だった。  奴隷解放宣言がきっかけだ。 ミシシッピー州のデルタ地帯とその後、北部に行ったアフリカ系アメリカ人によって広がった。デルタブルースとシカゴブルース。  最初は口承で伝えられた。譜面が残っているのは1920年以降のものだ。」  ギターで古いブルースを聴かせてくれる。 「それ以降はレコードが残っている。有名な曲が聴ける。  後のミュージシャンに多大な影響を与えたブルースという音楽。  好きなミュージシャンをあげてご覧。」 「クラプトンとか、昔の。 ブルースブレーカーズとか、クリームとか。  あと、初期のストーンズ。ブルースっぽい。」  バンマスが爪弾きで歌い始める。 「フーチークーチーマン。それ知ってるよ。」  合わせて口ずさむ。 「零士、良い声してるな。 ロッドスチュワートみたいな色気がある。」 「ギター弾けないけど、歌うのは好きだ。」 「零士のルックスで歌がうまかったらきっと売れるよ。」 「それは無理。」  バンマスが冷たく言った。 「ピアノは?」 「弾いた事ない。」  零士の声に 「俺、中学までピアノ習ってた。」 「えっ?草太すごいね。田舎のおぼっちゃま、か?」 「ばあちゃんが音楽を一つ位習えって。 尺八とか、三味線とか勧められたけど、母ちゃんがピアノって言ったんだ。ピアノあったから。」

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