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第71話 辞める
陸に事務所に呼ばれた。
「もうスイッチが入ったんじゃねぇのか?」
「陸のほうこそ、ヤリテェって顔してんぜ。」
「ホストとストリップと二足の草鞋、じゃ、大変だな。姫にも付き合って抱いてやってんのか?」
「どこで聞いた?それじゃ身体が持たねえよ。」
「枕はやらないんだったな。
恋人とはうまく行ってんのか。」
「ほっといてくれよって言いたい所だけど、ま、うまくいってるよ。
草太には手ェ出さねえって約束だろ。」
零士は草太と一緒に店を辞めたいと思っていた。
「話があるんだ。実は店を辞めたい。
草太と一緒に。もう二度とこの仕事はしねぇから。あんたのシマぁ、荒さねぇから。」
ガシッ。いきなり殴られた。
「今まで顔だけは殴らねぇと決めてたんだけどよ、その綺麗な顔、壊してやろうか。
おまえの高いプライド、と可愛い恋人共々、沈めてやるよ。」
陸がヤクザの本性を剥き出しにして、飾ってある日本刀に手を伸ばした。
「二人重ねて叩き切ってやる。
草太、連れて来い!」
「かしら、止めてください。
4課が張り込んでます。
何か嗅ぎつけたようです。」
胸をバクバクして日本刀を下ろした。若いもんがとっさに拾い上げて、鞘に納めた。
重量のある刀身を素早く鞘に納めた、この組員も剣の心得があるようだ。
「陸、いい若いもん飼ってるな。」
「これで済むと思うなよ。」
零士は草太を連れて、ジャズバーに行った。
「店、辞めて来た。俺と草太も。」
「ヤバいんじゃない?よく辞めさせてくれたね。
やつら、しつこいよ。何かあるんじゃないか?」
たまたま徹司も来ていた。
「元々俺は秋吉に売られたんだ。
秋吉は高校の頃からかかってた医者だった。
親も信頼していた。医者で大学教授だから。
秋吉に縛られて言う通りにしていた。大学に入って、部屋住みにされた。
そこで、おれ、気が付いた。奴は変態だ。
変態からヤクザに売り飛ばされた。
ここのヤクザは変わってた。」
零士の自分語りが始まった。
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