73 / 102
第73話 強盗
「警察を呼んだ方がいいな。」
零士が、こっちは何も悪い事してないんだから、警察は味方だよ、と言う。
感じ悪い刑事が来た。
「あんたたち、ホストなんだって?
しかもホモ?」
嫌な言い方をする刑事だった。もう一人、気の弱そうな刑事も一緒だった。
「心当たりはないの?
知ってる顔はいなかった?」
さも、嫌そうに話を聞いて来る。
徹司と美咲ちゃんが駆けつけて来てくれた。
「ちょっと刑事さん、感じ悪いわ、その聞き方。
ちゃんと聞きなさいよ。」
気の強い美咲ちゃんがくってかかる。
零士と草太の関係に薄々気付いているようで、草太は気まずい。
刑事の聞き込みが終わった。
「また、詳しい事がわかったら署の方においで頂くと思います。被害届出してもらうので。」
嫌味な方の刑事が睨みつけて帰った。
美咲ちゃんから覚悟していた質問がきた。
「零士と草太、一緒に住んでるの?」
この前、零士の実家の事を聞かれたから、気付いてたよ、と言われた。
「あたしが驚いたのは、零士も草太もそっちの人だったって事。」
「そっちの人?」
「そう、男が好きなの?」
美咲ちゃんはボーイズバーで働いている零士をずっと気にしていた。どんな店か、人から聞いた。自分で行く勇気は無かった。
素朴で裏のない、草太を気に入っていた。そして子供の頃から片思いだった零士。
「二人が一緒に住むほど親しくなってたなんて気が付かなかった。」
草太の肩を抱いた零士が
「親父には言わないでくれ。」
「すぐ、バレるよ。」
「この前、ここに親父とおふくろ、アレックスまで一緒に来たんだ。」
「えっ?フラン?あ、アレックスね。
元気だった?まだ日本にいるんだね。」
ずっと黙って聞いていた徹司が
「おまえたち、よく平気だな。怖くないのか?」
確かに。強盗に襲われたんだ。殺されたかもしれない。
「知ってる奴だった。
店のダンサー。一人はベトナム人。あと、タイ人もいた。知ってる顔をだった。」
「陸だ。見せしめに陸が寄越したんだ。」
ピアノまで、壊された。
ともだちにシェアしよう!

