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第74話 強盗 2

「グエンはやらされただけだ。 何か、脅されたんだよ。」  草太は仲の良かったウォーキングダンサーたちを警察に売りたくは,ない。 「零士、もうあの店に行かないで。罠だよ。 きっと、零士が怒って飛んでくるのを待ってるんだ。」 「それくらい、わかってんだよ。」  怒りが収まらない零士は、今すぐ陸を吊し上げたい。 「ヤクザなんだ。しつこいんだよ。 草太は顔見たんだな。名前知ってる奴いたか?」 「うん、ベトナム人のグエン。 あと、タイから来たソムチャイって奴だ。  他に3人くらいいたけど、名前はわからない。 あの店はタイからダンサーをスカウトして来るんだ。」  確かにタイの男たちは綺麗な人が多い。鍛えていて身体も綺麗だ。 「強盗なんかやって、強制送還ものだろ。 みんな犯罪者になってしまう。」  草太は警察を呼んだ事を後悔した。 「おまえはいい奴だな。 こんな酷い事されたのに。」  零士が抱き寄せてくれた。 「そこ、イチャイチャしない! まずはここを片付けなくちゃ、だな。」  徹司が現実を突きつける。 倒されたピアノを起こして音を出してみた。 「あはは、ダメだ、ホンキートンクピアノになってる。」 「ブルースだな。」  美咲ちゃんと徹司が手伝ってくれたが、素人の手に負えるものではない破壊のされ方だった。 「知り合いの大工さんに頼もう。 家具は新しく買った方がいいな。 ソファがナイフで切り裂かれてる。 金、貸そうか?」 「いや、大丈夫。 それくらいならあるから。」  零士が身体で稼いだ金があった。 「とりあえず、屋根も壁もあるし、 電気も水道も普通に使えるから、 なんとかなるでしょ。」  零士の頼り甲斐のある言葉に、美咲ちゃんと徹司は帰って行った。徹司が車で送って行った。  徹司は帰ってから、探偵の吉田さんに連絡した。 「あの、ヤクザが仕掛けて来たんです。 警察、呼んじゃったけど、ウチウチで解決したい,と草太が言い出して。どうしたものか、と。」 こんな時頼りになる元警官だった。

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