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第78話 陸が来た
やっと修理が終わって、きれいになった家に陸が訪ねて来た。
「ようっ。」
「何だよ、お供も連れずに一人で来たのか?
大丈夫か?」
「ここが、二人の愛の巣、か。」
「恥ずかしい事言うなよ。
おまえ、時々、乙女だな。」
ソファにどっかり、腰を下ろして
「警察沙汰にしないでくれて、ありがとう、な。
礼をいわせてもらうよ。
グエンたちもホッとしていた。
これ、手土産だ。」
デカい犬を連れて来た。
「アメリカン・マスティフだ。
おまえたちのボディガードに連れて来た。」
「こんなの飼えないよ。」
「やれやれ、この犬がおまえの代わりに俺たちを見張るんだな。」
すごい怖い顔のデカい犬だった。
「マスティフは、人を食い殺す軍用犬だ。
飼うのは難しい。」
陸は声を潜めて
「でもこいつは特別なんだ。」
気が弱くてダメ犬なんだそうだ。気が弱いって?かなり大きな犬で、これでもまだ子供なんだそうだ。
「おいで。」
両手を広げて呼ぶと嬉しそうに飛びついて来た。
後ろに倒された。
「わっ、ちょっと待てよ。」
嬉しくて尻尾を振りまくっている。
「子供ってことはまだこれ以上大きくなるってことか?」
「ああ、体長70センチくらい、体重75kg位になるって。」
草太に懐いて離れない。
「わっ、俺、飼えるかな。」
犬は草太に抱きついている。
「こいつは、どこにも行き場がないんだ。
あまり人に懐かないから、あとは殺処分が待ってる。可愛がってくれる人に飼ってもらいたいんだ。」
陸はとんでもないものを連れて来た。
犬は零士にも懐いている。
「可愛いよ。飼おうよ。」
「かかる費用は請求してくれ。
費用の方は死ぬまで面倒見るよ。」
何とかして零士との絆を作りたい陸の考えだった。
「平均寿命は、この犬の場合11年位、と言われている。死ぬまで面倒見てやってくれ。」
陸は、零士と草太との縁が切れないように、祈るような気持ちで犬を連れて来た。
寂しい男なのだ。
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