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第80話 日常

 家の周りをパトロールと称してうろつく刑事二人。嫌な感じだった。  ある日マックスを連れて散歩から帰ったら、家を覗いている刑事たちを見つけた。 「今関さん、平井さん、見回りご苦労様です。」  嫌味を込めて挨拶した。後から 「ウー、ワン!」  マックスも挨拶した。 「うわぁ!」  平井刑事が飛んで逃げた。 「もう、来ないかもね。犬怖いんだ。」 「特にマックスはデカいからな。気分いいな。 マックス,グッドジョブ。」 「ワオン!」  意外と二人と一匹の生活が軌道に乗ってきた。 こんな暮らしがあるとは思わなかった。  犬のいる暮らし。 零士はいつものソファに座ってマックスの鼻を撫でる。 「人生ってどこでどう変わるかわからないものだ。」  数日後、主治医の龍一と貴也が訪ねてきた。 「やあ、犬を飼ったんだって?」 「ワオン!」  マックスが挨拶に来た。 「わっ、デカッ。これ犬?牛とかじゃね?」 マックスが貴也の顔を舐めた。 「ワハハ、愛情表現が激しいなぁ。」  龍一が 「おまえに似てるよ。」  マックスの頭を撫でた。 「俺、そんなに激しいかな?」 「貴也はこう見えて中々激しいんだよ。」 「何言ってんの?やめろよ。」 「その後、変わりはないかな?」  医者らしいことを言う。 「話は聞いてるんだ。 一時、険悪なムードにもなったんだよ。 シマウチで勝手をやられた、ってね。  強盗事件は警察沙汰にならずにすんだんだね。 大門が感謝していた。  日本に正当に働きに来ている外国人を犯罪に巻き込むのは、大門、あ、組長ね。  大門が一番嫌う事なんだ。」 途上国から働きに来ている人たちと共存共栄するのが大切だと言っている。 「そんなぬるい事言ってるから組は大きくならないんだ、という意見もあるんだが。」  龍一は、4代目を継ぐ気はない。虎ニに任せている。 「田舎の医者で十分なんだよ。」  大学病院に席がある。教授戦などには関わりたくない。  貴也にマックスが懐いている。

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