85 / 102

第85話 また振り出し

『ボーイズバー ジュネ』に零士が戻ってきた。  姫たちが大喜びだ。 夜のショータイム。あのウォーキングダンサーたちが店内を一回りしてショーが始まった。  リーマン風の、流星の部屋、は定番の人気だ。 スーツ姿がカッコいい。憧れの独身男性の部屋、という設定。  端正な顔立ちの流星も人気がある。 「あんな男と結婚したい! スーツ姿が素敵。毎日上着を脱がせてあげたい。」  お世話したい、と母性本能をくすぐるイケメンなのだ。スーツの背中に抱きつきたい、と姫たちが殺到する。  そしてしばらくぶりの零士。 白い天蓋付きのベッドで、透明な妖精のような零士がうずくまっている。  膝立ちでこちらを見た。薄衣に包まれてキツい目をしている。  現実から離れて、客は不思議な世界にいざなわれる。  綺麗な黒髪をかき上げてコチラを見る。 陸に切られた髪も落ち着いたセミロングで妖艶さは変わらない。  綺麗な身体が見えてくる。姫たちの溜め息と共にライトが身体を嘗め回す。  視線は零士の男の部分に集中する。 今日の零士は勃起しているか?が見どころだ。 「意外と大きそうよ。」 「誰が慰めるの?」 「あたしだったら、いつでもOKなんだけどな。」 「枕、やらないんだよね、零士は。」  零士を買いたい客は多い。 「零士は安売りはしないのよ。」  立ち上がった零士が上に着ていた薄いシャツを脱いだ。胸の刺青が見える。 「綺麗な薔薇。」  薄衣を脱ぎ捨てて立ち上がった。ベッドから降りてきて、そのTバックの下着越しに,手で抑える。 「きゃーっ、Tバックが小さい。 はみ出しちゃう!」  一番前、かぶりつきにいた姫が手を取られてステージに上がった。  腰に手を当てて抱き上げられ、有頂天になっている。 「キャーキャー」  客席もうるさい。上がった姫は、ベッドで半裸の零士に抱き寄せられて、セクシーなキスをもらった。  スポットライトが当たって零士がTバックを 下ろした一瞬、照明が落ちた。 「キャーッ」  客席の姫たちが失神する勢いだ。ホストたちが手分けして支えている。 「姫たちのパンティがグシャグシャだな。」

ともだちにシェアしよう!