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第87話 徹ちゃん
零士と草太が一緒に帰って来た。
玄関を開けるとマックスが飛んできた。
「うわぁ、寂しかったか?
よしよし、いつも夜は留守番になってしまうな。
ごめんね。一緒に連れて行ければいいんだけど。」
「大丈夫だよな。強い犬なんだろ。
留守番してくれよ。
不審者はやっつけていいぞ。」
嬉しそうに尻尾を振っている。
「明日は海岸で走ろう。
草太、風呂に入ろう。」
零士は陸にフラれたようで、何だか寂しい気持ちだ。自分には草太がいるのに。
(流星もいい男だし、よかった、と言えるんだろうな。)
草太と一緒に風呂に入って愛情を込めて洗ってやった。タオルを巻いて出ると、マックスが寂しそうだった。
「来い!マックス。」
飛んで来るのが可愛い。
「みんな納まる所に納まったんだな。」
呑気なことを考えていた。
次の日、徹司から連絡があった。
「草太に相談があるんだ。
零士にも聞いてもらった方がいいかな。」
直接話したい、と家に来ることになった。
「どうした?」
「わあっ、犬デカい!」
「徹ちゃん、犬苦手か?」
「いや、ビックリしただけだ。田舎の家でも飼ってるから大丈夫だよ。」
「ああ、チョコラブのアグネスだね。元気かな?
マックス、徹ちゃんだよ。」
犬は徹司とは友好的だった。
「どうしたの?」
「それが、あの。美咲ちゃんの事なんだけど。」
「美咲がどうしたの?」
「妊娠したんだよ。」
「へっ?誰の子?」
「俺の。」
「徹ちゃん、勘弁してよ。冗談じゃ無いよね。
いつから付き合ってんの?」
草太と零士は自分たちの問題で忙しかったから、徹司と美咲ちゃんの事は一緒に考えた事はなかった。いろいろ助けてもらってるのに友達甲斐が無い、と草太は自己嫌悪だった。
「零士はどう思う?」
「本人たちの問題だろ。」
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