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第88話 結婚?
徹司は山形でも有数の資産家の息子だ。子供ができた事で急に結婚話が進んだ。
「徹司が山形で結婚式挙げるって。親戚筋だから、俺も出席しないわけにはいかない。
どうしよう。」
零士との事、ホストまがいの仕事の事、考えると問題山積だった。
草太は、大学も自主的に辞めてしまった。
徹司はそこの所、抜かりなく大学に籍を置いている。
「ばあちゃんになんて言おう。」
「草太のばあちゃんなら、ありのままでわかってくれるんじゃないか?」
「うん、零士の事はどうかな?理解できるかな?」
しばらくして徹司と美咲ちゃんが結婚式の招待状を持って来た。
「零士と草太、二人とも出席してもらいたいの。」
「ダメだよ。田舎の人、みんなビックリしちゃうよ。草太が男、連れて来たって。」
泉家の恥さらしだって言われそうだ。
ばあちゃんにだけ、電話で相談した。
「あいやぁ、そっただこと、おら、わがらねぇ。
草太の恋人さ、連れてくんの?
父ちゃんにも会ってもらわねば。」
「だから、男の人なんだってば。」
「へぇ?嫁っ子がオドコ?わがらねぇな。」
ばあちゃんは理解に苦しんでいる。親父にうまく話してもらおうとしたのは間違いだった。
「無理だよ。俺の親父だって理解出来ないんだから。でも、ばあちゃんはいつだって俺の味方なんだ。絶対わかってくれるよ。」
草太はいっその事、自分が美咲ちゃんだったら、と思った。普通に結婚して子供を産む。
女子はいいなあ。予期せぬ妊娠もめでたい事になる。それに比べて、零士と草太はめでたい事とは程遠い。
仕事もホストと男性ストリッパーだ。
世の中の底辺にもならない。マトモな市民権は無いのだろう。
「所得税も保険料も住民税も払ってんだから、立派な市民だ。何も悪い事はしてないよ。」
いくら力を込めて言っても、誰もマトモに相手してくれない、そんな存在なのだ。
零士に抱きついて涙をこぼす草太に
「泣くな!自分を否定するな!
俺たちはちゃんと働いてるんだ。」
ただのカラ元気にしか思えない零士の言葉だった。
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