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第91話 秋吉

 しばらく忘れていた。秋吉が証拠不十分で不起訴になった。精神鑑定も、経過観察という事で無罪放免になった。 「なんだって⁈」  叩けば山ほどほこりが出る男だった。 大学は民事で訴訟を準備したが、刑事訴追出来るものは少なかった。  薬事法違反、医師法違反、小児性愛者、児童売買春、斡旋、ストーカー規制法違反、まだまだ他にも出て来そうだが、なぜか、どれも証拠不十分なのだった。あと少し。犯罪立証にはあと少し足りないのだ。 「そんなバカな事あるかい!」  陸の事務所でも関わった幹部たちが連座制で逮捕された。みんな秋吉がチクッたのだった。  主に風営法だった。警察はヤクザの言い分より秋吉の方を信じた。 「ずいぶん、甘く見られたようだ。 この落とし前、どう付ける?」 T会の幹部たちが集まっている。 「全部この秋吉ってのがテメェ一人でやってんですか?」  納得いかない、とある幹部がいきり立っている。 「奴はガキが好きなんだ。特に男のガキ。 東南アジアじゃ親が自分のガキを売りに来る。  奴はそれを日本の変態金持ちに斡旋してたんだよ。」 「ど素人一人にできるわけねえだろ。 何かバックにいるな。」 「おうっ、若頭か、陸も偉くなったもんだ。 何か,掴んでんじゃねえのか?」 「ああ、ウチの組がずっと御法度にして来た、違法薬物と児童売春、両方とも握ってる組織が出て来たぜ。」 「陸、知ってんだろ?」 「ウチはタイルートから人を入れてんですが、チャイナルートがきな臭いんですわ。」 「チャイマ、か?」 「そう、黒竜江省辺り出身の若い奴が大量に入国してるんです。」 「入管は?よ。」 「役人はもうズブズブですわ。チャイナから帰化した役人が手引きして、チャイマの若い奴が日本の若者をどんどん向こうに行かせてるんです。」 「電話で詐欺、ってのか?」 「そうそう、命知らずの若いもんが日本に入って来て、借金まみれの日本人を向こうに送る。  パスポートを取り上げられて監禁されてカケ子やらされてるんです。電話は外国語訛りのない日本人が必要ですから。」 「ひでぇな、こっちはまじめにやってんのに。 麻薬もはいってきてるんだろ?」 「日本のヤクザも舐められたもんだな。」

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