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第95話 急転直下

 事態はあっという間に変わっていく。 右翼の街宣車が来た。装甲車だ。防弾になっている。頼もしい車だ。 「すげぇ、こんなの常備してるなんて、佐波一家って武闘派なんだな。」 「3代目、佐波大門、が、喧嘩好きだって。 若頭の若松さんも武闘派で有名だよ。」 「あの、医者の龍一さんって?」 「佐波一家の4代目、長男坊だよ。 弟の虎ニが武闘派だな。」 「あの違法薬物の一件で海浜病院にいたドクターだよね。ありがてえ。」 「金筋の極道だから、な。」  チャイマの本部にカチコミに行く前に、陸の容体を問い合わせた。 「なんだって?まだわからないって? 死ぬか生きるかわからないってのかよ。」  組の士気が上がらない。若頭の生死が不明では、どこへ行けばいいのか気持ちの納めどころが決まらない。 「ちくしょう!」  あの流星が、 「俺も一緒に行かせてください。 陸さんのカタキ、取らせてください!」  イケメンの綺麗な顔を歪ませて泣きながら懇願している。  そこに、装甲車を指揮して来た若松が到着した。  「大日本倭塾」(だいにっぽんやまとじゅく)元塾長、若松だ。  北関東の暴走族をまとめて右翼団体を立ち上げた男。10代、20代のヤンチャな奴で知らないものはいない。気力、胆力の男、だった。 「今は極道、佐波一家にゲソを預けて若頭やらせてもらってます。  この度は、ふざけた外道にチャカ弾かれて、 日本男児の、恥、雪ぎ(そそぎ)ましょう。」 「ご丁寧な助っ人、いたみいります。」 本格的な、出入り、の準備が整い、一斉に出発した。 「新宿だったら、佐倉組長にも、スケてもらいましょう。」  関東桜一家、佐倉大五郎。声をかけなかったら後で叱られる。顔の広い幹部が連絡を取っている。 「大事になって来ました。 武者震いが止まりません。」 「ああ、俺も初めてだ。本格的な、出入り、は、な。」 「警察に介入されないようにしないと。」 「奴ら、この頃はチャイナの味方だから。」 「信用出来ねぇな。」 「倭塾の若いもんは肝(キモ)が座ってるな。」 「日本も中々捨てたもんじゃねぇですよ。」  いきなりの結束。気持ちのいいヤクザたちだ。

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