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第100話 零士と草太

「みんな変化していくね。 俺たちはどうなるんだろう。」 「なんだ、草太は不安を感じているのか?」    零士は草太を自分の家に連れて行った。合気道の道場だ。 「合気道は身につけておくといい。 ただ、変な神様が出て来ると嫌になる。」  宗教団体と関わりがある。 草太はいきなり親に会うことになって焦った。  零士の事は、草太の親には話した。ばあちゃんが応援してくれた。  零士の親に会うのは初めてだった。 武道を極めた人だと聞いている。 「初めまして。泉草太です。」  零士の父は、ほっそりしていてイメージと違った。零士がスマートなのは父親に似たのか、と納得した。 「君も合気道をやらないか? 手を出してごらん。」  握手か、と思って手を出したら軽く掴まれてひっくり返った。 「あいたたた、びっくりした!」 「すまんな、ちょっと遊んでしまった。 君は受け身からやらないと。」 「はあ?」  軽い力でひっくり返った自分が不思議だった。」 「すごいですね、合気道。」 「親父、いきなり,やめろよ。俺の大事な人だ!」  そばて聞いていたアレックスが 「オーノー!」 英語で叫んだ。 「零士がゲイなら 私でも良かったんじゃないの?」 「あ、草太、こちらアレックス。 フランスから来たお弟子さん。」 「アレクサンドル・バルテルミーですよ。 ずっと零士を愛してます。 どうぞよろしくお願いいたします。」 「はい?よろしくと言われましても・・。」 「アレックス,ふざけんなよ。」 「でも,私、草太ちゃんより強いですよ。 小指一本で倒せます。」 「だから何だよ?おまえ、もう国に帰れよ。」 「師匠、何とか言ってください。」 この男は一体、何、考えているのだろう。    今までボーイズバーで結構な大金を稼いでいた零士。これからのことが全く見えない不安。  それでも食事は楽しく終わった。 「親父、俺こいつと暮らしてるんだ。 家も借りた。犬も飼った。 家庭といってもいいと思う。それを言いに来たんだ。俺は病気じゃ無かった。  じゃ、母さん、ご飯美味しかったよ。 ごちそうさまでした。帰ります。」  草太の手を取って帰ろうとする。 「零士、ちゃんとやれてるの?」  この母は、零士が秋吉の所でどんな目にあったか知らないのだ。  今更あの嫌な話を蒸し返してもしかたない。 「母さん、ありがとう。」  零士と草太は二人の家に帰って来た。 マックスが飛びついて来た。 「お土産だよ。」 母が持たせてくれた鶏のレバーの茹でた奴を皿に入れた。 「すごい勢いで食べてるね。」  行く時ご飯は入れてったのにもうからっぽだった。 「ワオーン!」 マックスは語尾を伸ばして返事した。

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