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第101話 陸が起きた

 病院に見舞いに行く。 陸は眠ったままなので,変化はないだろう、と様子を見に行った。  ベッドに起き上がって座っている陸が見えた。 流星が足のマッサージをしている。  寝たきりだったので筋肉が衰えて歩けないのだ。 「陸!起きたのか?」 「ああ、目覚めたらコイツがいて泣かれた。 俺、ずいぶん寝てた?」 「ああ、死んだか、と思ったよ。」  零士は陸に抱きついて泣いた。 「死なねえよ。あの世の手前で追い返された。 まだ,早いって。」  陸らしいことを言う。 ずっと健気に看病している流星が 「零士さん、草太さん、ありがとうございます。」 「待ってろよ。俺、店必ず立て直すから。 再開したらまたスタッフやれよ。」 「ああ、わかった。いい考えがある。 俺が店やるよ。おまえが戻って来るまで店繋いでおく。だから、早く良くなれ。」  零士は思いつきで口走ったが、いい考えだと思った。バラバラになったスタッフを探し出して,開店準備を始めた。  あの店は空き店舗のまま、放置されていた。ビルのオーナーもT会の息のかかった不動産屋だからそのままになっていた。 「わあ、カビ臭い。」 店が酷いことになっている。零士の貯金で二人暮らしているが、店の修理までは手が回らない。 T会の幹部に連絡した。 「あの、俺、検見川零士と言います。 安藤陸さんがボーイズバー ジュネを再開したいって言ってるんです。  資金を調達したいんですが。」 金の事になると難しい、と思っていた。 「おうっ、おまえたちが来るのを待ってたよ。 塩漬けになってるあの店をまたやろうって物好きがくるのを、ね。」  そういうと事務所の金庫から札束を出して並べた。 「会長があの店は潰すな、っておっしゃってるんだ。」 T会の会長と言えば広域暴力団のトップだ。 四の五の言わず決断が速い。  あの地下の工事が始まった。

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