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バニラのように甘いBDSM1※
晋也の部屋へ入るのは二度目だ。一度目は、ここへ引っ越した初日にマンションの中を説明してもらったとき。
口から心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしていると、晋也がベッドの上に座る。
「ストリップ 」
震える手でネクタイをゆるめ、ワイシャツのボタンをひとつずつ外していく。ベルトを取り、スラックスに靴下、下着もすべて脱いで全裸になる。
「……これでいい?」
「ああ、ベットの上まで来いよ。カム」
素足でフローリングの冷たい床を歩き、モノクロ調のベットの上で膝立ちしたら、頭を撫でられた。
晋也は服を着込んでいるのに、俺だけ裸な状況が恥ずかしい。
「そのままオレの膝の上に座れ」
「えっ……」
「いやか?」
「いっ、いやじゃないけど」
「じゃあ、いいよな。シット 」
ガッシリした肩に手を置き、ゆっくり腰を下ろす。
「いい子だ」
頬や額に口づけられると、くすぐったくて身をよじった。
「重くない?」
「まあ……男だからな」
妙な間を開けて答えるのを不審に思う。
「つまり重いってことだね。ていうか、俺以外の人とヤって童貞、捨てた?」
すると晋也は口をへの字にして黙り込んだ。
それもそうか、もう十年以上も経っている。ケンカ命な高校時代の晋也ならいざ知らず、スーツ姿の夏目くんなら男女問わずモテモテだよなと納得してしまった。
顔も知らない女の子たちや、タチからもてはやされるネコの男と彼が裸でキスしているシーンを脳内に描き、メラメラとヤキモチを焼く。
なんだか興ざめで、このままプレイ込みのセックスをするのは、やだなと思っていれば顔を上に向かされる。
「ほかのサブがいたことはある。けどパートナーや恋人になってほしいのは、おまえだけだ。ずっと忘れられなかった。……信じてくれねえのかよ?」
眉を八の字にして自信なさそうにしている姿に胸がキュンとする。自分でも単純だなとあきれながら彼の唇にキスをした。
「もちろん、信じてるよ」
「……そうかよ」
唇を尖 らせ、目元を赤くする彼の姿に、つい笑ってしまう。
「ちゃくちゃ重いってわけじゃねえからな。つーか、そんなに腰引けて、どうすんだよ?」
両手で腰を掴まれ、そのまま晋也の上半身と密着する位置まで動かされる。
ゴリッと固くて熱いものが尻にあたって「うわあ!」と悲鳴をあげた。
それが何か気づき、身体に火がついたみたいに熱くなる。
「晋也、これ……」
「……一度は酸っぱいぶどうとして諦めた大好物が何十年越しに食べられるときた。誰だってヨダレを垂らして、すぐにでも食いたくなっちまうに決まってるだろ? なあ、シャツを脱がせてくれよ。トリップ」
服の裾を掴み、一気に持ち上げれば、「これじゃ息できねえよ」とくぐもった声を出した。
「ご、ごめんね。ちょっと待って」
人の服を脱がせた経験なんてないから四苦八苦する。時間を掛けて、なんとかシャツを脱がすことに成功した。
極限まで鍛えあげられ、均整の取れた肉体美に生唾を飲んだ。
「すごいね……前よりも、もっとかっこよくなってる」
筋骨隆々な腕に触っていたら手首を取られた。
「スケベ。誰が勝手に人の身体を触っていいなんて言った」
「それは! んっ……」
そのまま右の手のひらに唇が触れたかと思うと赤い舌を見せつけて、一本ずつ丁寧に指を舐められていく。
まるでフェラをされている気分になり、下腹部に熱が集まる。前かがみになれば頭上から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「すげえな。ぜんぜん触ってねえのに、もうフル勃起かよ」
「嘘……なんで!?」
気がついたら俺のチンコは完全に上を向き、雫 をタラタラと垂らしている状態だ。
晋也はオレの手を放すと、その場で新品のローションの封を切り、蓋を開けた。透明なローションを手のひらにたっぷり出して俺の自身を握る。
「ひっ……ん」
ヌルヌルした熱い手に包まれ、ゆっくり上下に擦られる。やっていることは自慰行為と大差ないのに、いつもよりも気持ちいい。
「オレの身体を見て興奮するなんて迅は変態だな」
意地悪な言葉を耳元で囁かれ、今度は耳をねっとりとねぶられる。
どんどん熱が腹の中に溜まって渦巻き、せり上がってくる。
「違う……あっ、晋也に抱かれるって……一杯、愛してもらえるって……期待した。うあっ!?」
耳殻を甘噛みされてイキかける。ピュッと先端から先走り液が出てしまった。
クスクスと晋也は笑い、俺の首に舌を這わせる。鎖骨から胸部へと移動してきて唇で乳首を強く吸われ、歯をあてられる。
「そうかよ。……イキたくなったら、ちゃんと『イく』って言えよ。じゃねえと……お仕置きだ」
通常時の俺なら絶対に晋也の言うことをきく。
だけど……過剰なくらいの快楽に酔い、もっと気持ちよくなりたくて、わざと「悪い子」になったのだ。
「やっ、晋也」
もう片方の乳首も同じように吸われた。舌の先でつつかれ、弾かれ、下半身についたものを手で愛撫される。
「駄目、来ちゃ……出ちゃうよ……ああっ!」
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