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第1話-7 特別だよね
秋は席が前後で近いことを良いことに、
ことあるごとに春に話しかけた。
多くの質問を投げかけたが、そのほとんどの質問に「んー・・・」と考える仕草をした後、「今瀬くんは?」と聞き返され、それに秋が答えると、「そっか」と微笑まれ、その笑顔に圧倒して誤魔化されてしまい、春の回答のないまま会話が終わるというのがいつもの流れで、だから、秋は一向に春のことを知れずにいた。
この頃にはなんとなくグループみたいなものができていた。
春は、同じ事務所だという舛井 光里 、そして春と過去に共演歴があるという松山 淳 と、よく一緒に行動していた。
そこに秋と、秋が入学式で仲良くなった高野の二人が参入していくようになり、休み時間などはその五人で行動を共にするようになっていた。
その五人でいる間も春はあまり多くを話さず、
穏やかにいつもニコニコと微笑んでいた。
一緒に過ごしている時もそうでない時も、
秋はつい春をよく目で追っていたが、
春には隙がなかった。
春は常に見られていることを理解しているかのようだった。無防備な姿は一切見せず、いつも、小さな微笑みを浮かべていた。
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