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第2話-5 「心配してくれたの?」

帰った後、寝る間際。 お互いベッドに入った後、秋がそういえばさ、と春に声をかける。 春がふっとこっちを伺ったのが分かる。 「春も俺のこと、名前で呼んでよ」 春は何も言わないで、ただこちらを見ている。 その反応に秋は不安になり、春に尋ねる。 「てか...俺の名前知ってる?」 「秋、だよね」 春は返事をした。 秋はまたそれに、ふっと嬉しくなり、笑った。 「同じ季節の名前やな」と秋が言うと、春はふわっと微笑み「そうやな」と少し笑って言った。 試しに、春、と秋は呼びかけてみる。 すると春はふっと笑みをこぼして、何も言わない。 「えぇ、言ってよ、春も」 「…やだよ」 春は小さく笑いながら言う。 「なんでよ〜!…恥ずかしい?」 「…まだ呼び慣れてないから」 「じゃあ明日」 「…うん」 「楽しみにしてるから!」 秋がそう言うとまた春は小さく微笑み、そして瞼を閉じた。 秋はその顔を少しだけ眺めた後、自分も目を閉じた。

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