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第2話-8 「心配してくれたの?」
秋は小さく笑う春の横顔を見て、思わず微笑んだ。
春の少しずつの自己開示が、たまらなく嬉しい。
もっと春のことを知りたい。
秋はそう思った。
秋は頑なに名前をもう一度呼んでくれない春に、ついに諦めてアイスを食べ進めていると、ふと、なぜ昨日神社まで自分を探しにくることができたのか、と不思議に思った。
そしてその理由を尋ねる。
すると春は「たまたまだよ、コンビニに行きたくて外に出ただけ」と答えた。
しかしホテルのすぐ近くにはコンビニがあることを秋は思い出して尋ねる。
「でももっと近くにコンビニあったよね?」
すると春は少し迷った仕草を見せた後、
「少し気になったから」と言い、
続けて控えめに説明を続けた。
部屋に戻ってから鞄をひっくり返して何かを探しているようで、お守りの紙の袋を何度も確認してたから、お守りがないのかな?と気づいて、と。
「夜遅く部屋を出ていったから...それにずっと帰ってこなかったから…神社って暗いし探せるのかな、と思って。」
「心配...してくれたの?」
秋は恐る恐るそう尋ねた。
すると春は小さく笑い、
何も言わず、アイスを一口すくって食べた。
そして笑って言った。
「やっぱりバニラ、美味しい」
そんな春の顔を眺めながら、春が自分のことを見ててくれたという事実に、秋は猛烈に嬉しくなった。
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