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第3話-10 「抜いてみたら?」

その夜、秋は意を決して実際にゲイもののAVを見てみる。 
が、正直、全くピンとこない秋。 やっぱり…と秋は思う。 
俺から春への気持ちはただの憧れみたいなもの、なのかな。 携帯の動画ページを閉じ、ベッドにゴロンと寝転がった秋。 ふと、映画での春と松山のキスシーンを思い返す。 もし、自分なら――。 自分の手が春の頬に触れ、そして春がこちらを見上げる。
 視線が熱く交差し、秋はそっと顔を寄せる――。 そう思い浮かべてみて、思わず秋はワッと起き上がる。 顔がカッと熱くなっているのが分かる。 
鼓動はありえないほど早くなっている。 秋は布団に潜り込んだ。 
ダメだ、と思いながらも、秋は湧いてきた欲求を抑えられず、そっと服の下に手を忍ばせた。 そうするともう止められず、秋は目を閉じて春を想像する。 春を押し倒し、春が秋を見上げる。 その瞳は潤んでいて、春は荒く息をし、胸を上下させている。 そして春が吐息混じりに名前を呼ぶ。 "秋――――" 「・・・っ」 
声にならない声が、喉の奥に引っかかった。 秋はその後、しばらく天井をボーッと見つめていた。 「・・・やばいな」
 そう秋は、言葉にできない葛藤めいたものを吐き出した。

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