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第4話-9 「好きな人いるの?」
「…それ、勘違いだと思うよ」
秋は春の思いもよらぬ返答に、呆気に取られる。
「勘違い…?」
すると春は微笑みを浮かべたまま、「僕、男だよ」と言った。
「え、知ってるけど…」
「うん だから、勘違いだと思うよ」
そう言って、春はそのままするっと振り返って、再び教室の外へ歩き出していってしまう。
予想もしていなかった返事と、置いて行かれてしまったことに呆気に取られていた秋。
だが次第に込み上げてくる感情のまま、春を追いかけて大きな声で呼び止めた。
「ちょっと待ってよ!」
春が背を向けたまま立ち止まった。
「勘違いとかじゃないから!」
「俺、ずっと春のことばっか考えちゃって」
「今日だってすごい….さっきのとかすごいドキドキして」
すると春はふっと振り返り、いつもの微笑みを浮かべ、答えた。
「ごめんね、距離、近かったもんね」
「別に好きじゃなくても、そういうのあると思うよ」
そう言って再び歩き出す春に、秋はついに春の腕を掴み、引き留める。
「待ってよ!」
つい、春を掴む腕が強くなる。
秋は思わず息が震える。
「...好きじゃないって振られるなら分かるけど」
「俺の気持ち…勝手に勘違いにしてなかったことにするのはおかしいよ」
「振るなら…ちゃんと振ってよ」
「…男だからって...馬鹿にして...そんなふうに言わないで」
すると春はそう言った秋をじっと見つめてから、ふっと視線を落とした。
そしてしばらく沈黙が続き、春が重苦しく口を開いた。
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