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第6話-2 寝起き
はい!と秋が緊張混じりの声で返事をすると、春がドアを開けて入ってきた。
「お疲れ!」と明るく秋は春を迎える。
そして春が荷物を置くや否や、秋は矢継ぎ早に1日目にどこ行ったとか何があったかなどを早口で話し始めた。
春はそれを優しく相槌をしながら聞いてくれていたが、ふと見た春の表情に秋はふっと話すのをやめた。
春はいつものように微笑んではいたが、その表情には少し疲れが滲んでいたからだ。
多忙なスケジュールの合間を縫ってこうして来たのだ。当然だろう。
秋は咄嗟にごめん疲れてるだろうに...と謝る。
すると
「ううん、教えてくれてありがとう」と優しく微笑んで春は返事をした。
優しく笑う春の表情に、また秋の心臓は勝手に高鳴った。
それを隠すように、秋は冗談っぽく振る舞う。
「校外学習なんて休んじゃったらいいのに」
秋がそう言うと、春があはは、と小さく笑った。
笑ってくれたことが嬉しくて、秋は再び冗談っぽく、
「でもちょっと旅行みたいで楽しみだったりした?」と聞くと、
「うん」と春が笑って頷いた。
そして言った。
「去年も楽しかったから」
その言葉に思わず嬉しくなった秋。
咄嗟に秋は言った。
「じゃあさ、旅行っぽいことしよう!後でこっそり抜け出そうよ!」
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