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第6話-10 寝起き

はい、顔洗うよ!と洗面所に春の腕を引き連れていく秋。 すると、シャワー...と小さい声で言う春。 それにええ!?と秋は大きな声を上げた。 「え!?!シャワー浴びたいの!?!」 「うん....時間....ない.......?」 「.....5分!5分で上がって!」 「うん...」 しばらくして洗面所から戻ってくる春。 
髪はびしょびしょのまま。 
思わず秋は「春―!?!?」と声をあげた。 しかし相変わらず春がモタモタと動くので、
ついに痺れを切らした秋が、春の髪をドライヤーで乾かし始める。 それに春は大人しく従っている。 乾かされてる間に、春が歯磨きをする。 
鏡の前で、秋はチラリと鏡に映る春の顔を見る。 
ぼんやりと目を開け、ただ歯磨きをしている春に、胸がギュッとなるほど、秋はその姿を可愛いと思っていた。 ―― そしてなんとか集合時間に間に合い、二人はバスに乗り込んだ。 げっそりしてる秋に、春は「ごめんね...?」と言った。 
この時にはすでに、春はいつもの春に戻っていた。申し訳なさそうにしている。 「や、全然全然...あっはは....」 先ほどまでの春を思い出し、つい笑ってしまう秋。
 春は少しバツが悪そうに、それを眺めている。 「俺もっと上手くなるわ」 そう言った秋を不思議そうな顔で見つめる春。 「春のこと起こすの、上手くなる。世界最速を目指す。特技にするわ」 「...どこで使うの?その特技」 「春起床選手権」 「ないよそんなの」 春は小さく笑った。 「ちなみに...冷泉さんはどのくらいで起こすの?」 「....5分くらい?」 「えっ強......!?」

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