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第8話-2 泊まっていきなよ
「いやあ、"友達"が結構辛くなってきたな、と…」
素直にそう打ち明けると、
「秋の贅沢病がでたよ」と、呆れた表情をされた。
「だから前にも言ったけどさ、避けられないだけマシだってば。"友達でいてくださってありがとう"の気持ちを持ちなさいよ」
「いやぁ〜……でもさ、春が人を避けたりとかさ、そんなん想像つかないけど…もしそういう人がいるんだったら、その人ってかなり特別だよね」
「まあ悪い意味でね」
「なんか俺、いい意味でも悪い意味でも特別じゃなくてさ…全く意識されてないってかさあ…。...はぁ…特別になりたいよ…」
再び呆れた顔で松山は秋を見下ろす。
「てか秋、そろそろワンマンじゃないの?」
「え、はい、そうですけど」
「色ボケてないでさ、ちゃんと仕事しなさいよ」
「いや、やってるってば〜…」
「今年は呼ぶの?春のこと」
「…迷ってる」
「あら、珍しい」
「いやだってさ、俺とっくに振られてるしさあ…俺の最近の曲春のことばっか書いてるし気まずいっていうか、恥ずかしいっていうか…」
「とっくに振られてるくせに何回も家呼んで手料理振る舞ってるやつがよく言うよね」
「それはさ、友達としてじゃん!」
「友達としてって便利な言葉だね〜」
「も〜!そうやって馬鹿にしてさあ…」
馬鹿にはしてないけど、と松山は言った後、
でもまあ、友達として誘えばいいじゃん?ワンマン。と松山は春の席に腰掛ける。
ちょ、勝手に座らないで!と謎の怒りを見せ松山の腕を引っ張る秋に、
いや春の席だし秋にそんな采配ないから、
とシッシッと手のひらで追い払われる。
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