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第8話-10 泊まっていきなよ

すると春は秋から目線を外し、何度か瞬きをした。
 「・・じゃあ、帰ろうかな」 春はそう、静かに呟くように言った。 秋は咄嗟に「そ、そっか!あ、服は全然そのままで、あの、次会う時とかくるときでいいし、そのまま来て帰ってもらったら」と言い、うん、とそれに春は頷いて、「じゃあまたね」と言って、あっという間に春は帰って行ってしまった。 一人部屋で、秋はなんとも言えない寂しさと悲しい気持ちに包まれていた。 「友達でいようって言われてたのに…」と秋は呟いた。 自宅に遊びに来るのと、お泊まりではやはり少し訳が違う。
 しかも、秋は春に一度告白をしている立場だ。
 恋愛的に好きだ、と言い、それを断られているのに、
泊まっていけば、と誘うなんて、絶対良くなかった。 ああ、と唸るように秋は小さく叫んだ。 春の友達として許されている一線を、
自分は超えてしまったのかもしれない。 秋は深くため息をついた。

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