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★第9話-1 優越感
結局あの次の日、秋は宙ぶらりんになった"鍋をしよう"という約束が生きているのか分からず、そのまま連絡できずにその日を終えてしまった。
許された一線を超えてしまった自分の愚かさに再度落ち込む日々を送る秋。
しかし、あの日唯一の救いだったのは、秋のファンだと声をかけてくれたクラスメイトの白石由真 の存在だった。
あの日の昼過ぎ、白石から「役でギターをすることになってギターを買いに来たけど、何が何やら良くわからないから、もし良かったら教えてほしい」との連絡が来た。
秋はその日朝から春のことで頭が支配されており、"気分転換になれば"とその願いを聞き入れ、良かったら今から行くよ、と自ら提案、白石がいる楽器屋に向かって、一緒に楽器を選んだのだ。
白石は秋が来てくれて助かったと大いに喜んでくれて、秋もそう言ってもらえて嬉しく思っていた。
その楽器屋で春からの連絡が来ていないかと何度も携帯を確認する秋の様子を見て、「何か予定ある?大丈夫?」と白石は心配してくれた。
いや、あるような、ないような…って感じだから、気にしないで!と言い、白石もじゃあ早めに切り上げようか、と気を遣ってくれていた。
――
そうして、秋は結局、春を誘うことなく自分のワンマンライブを迎え、無事に何の問題もなくワンマンを終えた。
客数は去年より少し増え、地道な活動の中で秋を支持してくれてる人が増えたことを嬉しく思っていた。
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