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第9話-2 優越感
ワンマンを終えて週明け、春は朝から学校に来ていた。
秋は姿を見れたことに、うれしく思ってしまう。
このところ学校に来れる日も少なくなっている春。
日々、1日でも多く春に会いたいと思っていたから、あの日のことに罪悪感を抱いていたが、それでも素直に秋は喜んでしまっていた。
いつもと変わらぬ様子を心がけ、秋はおはよう、と春に声をかける。
すると春はいつものように微笑み、おはよう、と言った。
秋はその対応に、ひどく安堵した。
もしかして、俺の思い違いだったのかも。
あの日帰ったのは何か別の事情で、特に深い意味はなかったのかも。
秋はそう考えた。
昼休み。
いつものように友人5人で話していると、突然白石が声をかけてきた。
秋くん、と呼ばれ、
あ、白石さん、こないだはありがとう!と秋は立ち上がる。
すごく良かったよ、ワンマン!と目を輝かせながら白石は伝えてくれる。
あとこないだはありがとう、来てくれて助かったよ〜、と
白石は、これ大したものじゃないけど、お礼!と手作りらしいお菓子を手渡してくれる。
秋は、え!?手作り!?と尋ねる。
うん、もしかして苦手…?と不安そうな尋ねる白石に、
いやいやそんなことない!むしろ嬉しい!大変だったよね、えー、わざわざありがとう!と喜んだ様子を見せた。
全然、と白石は照れた様子で微笑み、
そのあと「そういえば予定大丈夫だった?間に合った?」と秋に尋ねる。秋は咄嗟に返事をする。
「ああ…いやいや、何もなかったから大丈夫!」
「そうなの?てっきりワンマン前だったから何か大事なようだったんじゃないかと後から思って申し訳なくなって…」
その様子をニヤついて見ていた秋の友人の舛井、高野は冷かすように声をかける。
「なになに、二人で何してたの?」
すると白石が説明する。
「先々週の土曜にね、私が役でギターを弾くことになって、練習用のギターを買いに行く時に、一緒に選びに来てくれて。」と少し照れくさそうに言った。
「ワンマン前だったから重ねて申し訳なくて、それでお礼を」と手のひらで秋の持ったお菓子を目立たせた。
「へぇ〜」と舛井、高野はニヤついて返事をする。
そして白石はまた照れ臭そうに笑い、じゃあね、とたたたっと軽快な足音を立てて、去っていった。
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