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第9話-4 優越感

その後、いつものように、授業コマ間の10分間の休み時間になると
秋は春に話しかけた。 
が、春は秋に目線をやることもなく、
「…ごめん、今度でいい?」と教室から出ていってしまう。 やっぱりおかしい、と秋は思う。 そして最後の授業前、春は荷物をまとめだした。 
え、帰るの?仕事?と尋ねると、
…うん、とそっけなく返事をしてそそくさと教室を出ていく春。 秋は呆気に取られる。 
いつもなら、「秋も授業頑張って」と微笑んで教室を出るのに。 教師が教室に入ってきて、着席を促すも、
秋は思わず教室を抜け出し、春を追いかける。 靴箱前で春を呼び止める秋。 「春!」

 すると、春は足を止めるが、振り返らずに「何?」と言った。
 春のあまりの冷ややかな態度に、秋は何も言えなくなる。 「あ、あ…いや…あ…の…仕事、頑張って」 

「…うん」 そう言い、春はそのまま一度も目を合わせることなく、
去っていってしまった。 秋はそのまま放心状態で立ち尽くしていた。 
 明らかに春は、自分に対して何か思うところがある。
 だからこそ、あのそっけない態度だった。 
 けど、あの夜のことは関係ないのでは、と秋は思った。 だって、秋が朝に声をかけた時、
春はいつも通りに接してくれていた。
 だからその件は関係ないはずだ。
 だったら何? 秋は途方に暮れた。

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