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第9話-5 優越感

そのままずっと廊下に立ち尽くしたまま、授業終了のベルがなる。 
生徒たちが帰宅のために靴箱へ集まってくる。 
秋はやっと動き出し、教室へ戻った。 すると松山に声をかけられる。 「なに、サボり?」 秋は松山に虚に目をあわせ、
「なんか分かんないけど春を怒らせた、かも…」と力無く言った。 「は?怒らす?春を?」 心底不思議そうにそう言った後、
何やらかしたの?と松山は怪訝そうに尋ねる。 「いや分かんない…」
と、さっきあった出来事をしどろもどろに松山に話す。 
すると松山は「疲れてんじゃない?」と面倒そうに言った。
 「いや!」と秋は強くそれを否定する。 「疲れてる春はもっとこう…ああいう感じじゃ無くて!もっと浮世離れした感じにふわふわしてるみたいに…」 そう言い出した秋に、あーわかった分かった、いいいい、と松山は手のひらをヒラヒラとする。 そうしてどうしよう…と泣きべそをかく秋に、
いや普通に聞けばいいじゃん、俺なんかした?って、と言う松山。 「そんなことができたら俺はあっくんなんかに相談してないってば…」
 「なんかってなんだ、なんかって」 そして松山は続けて言った。 

「でも別に秋だけにそういう感じだったわけじゃないかもじゃん。他の人らが春に話しかけててもそうだったかもしんないし。秋が他の人よりやたら頻繁に春に声かけるから気づいただけでさ」 

「…それがいけなかったのかな…」 

「いや別にそれは今に始まったことじゃないし別に春も気にしてないだろうけど…あれじゃない?だから疲れてて、今日は人と話したい気分じゃなかった、みたいな」 

「はあ………」 まあそんな落ち込むなよ〜、と松山は雑に秋を励まし、まあ俺からもなんか今日連絡入れてみるわ、お先!と足早に帰っていった。

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