95 / 209
第11話-5 嘘つき
「触ってみたい」
え、と春は驚いた顔をして、「まつ毛?」と聞いた。
秋は何言ってんだ!と焦り、
や、や、冗談ね!冗談!と誤魔化した。
すると春はふっと目を閉じて、
顔を秋の方に向けた。
え、本当に?と秋は尋ねる。
春は目を閉じたまま、うん、と言った。
秋はしばらくじっとそんな春を眺めた。
そして、そっと手を伸ばし、
親指でそっと、春のまつ毛を撫でた。
すると春がふふふ、と笑った。
「え、なに」
「本当に触ったと思って」
「え、冗談だった!?」
「ううん」
そう言ってから春はゆっくり瞼を開け、
秋を見てから静かにいった。
「一瞬、違うこと想像したから」
ともだちにシェアしよう!

