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第11話-6 嘘つき
秋は恐る恐る、
「違うことって?」と尋ねる。
すると春は目を伏せて、何度か瞬きをした。
そして、
ふっと秋に目線を戻し、言った。
「キスされるのかなって」
じっと目線が交差する。
秋の伸ばした手が、春の頬に微かに触れた。
春はその触れた手を見るように、ふっと視線を落とした。
「していいの?」
秋のその言葉に、春はまた秋の目を見る。
じっと、何も言わない春。
秋の心臓は飛び出そうなほど早く動いていた。
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