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第16話-6 聞き分けのいい子
「めっちゃ嫌なんだけど」
「まあでもさ、止めてくれたんでしょ?会うなって。心配してくれたんじゃん?良かったじゃん」
良くないよ、と秋は悲痛な声をあげる。
「何されたんだろ、春…。え、あっくんはさ、向井さんになにされたの?」
「え、言いたくない」
「えっ…てことは、その、触られるとかそれ以上ってこと?」
「だから言いたくないって」
「ご、ごめん...でも...春も、そうなのかな」
「知らないよ 本人に聞けばいいじゃん」
「いや聞けないからあっくんに電話してんじゃん」
俺を便利屋コールセンターにするなよ、と松山は苦言を呈しつつ、まあでも聞かない方がいいかもね、と言った。
「春も言いたくないかもだし」
「それくらいのことされてるかもってこと?」
「いや分かんないけど」
まあ、嫌なら気をつければ、と松山は言った。
そして続けて、覚悟決めて仕事取りに行くならそれもそれでいいんじゃん?と言い、呆気なく電話を切られた。
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