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★第17話-1 それ以上のこと
夜中2時頃になり、春は秋の自宅にやってきた。
黙りこくっている秋を見て、春も何も言い出さず黙っている。
しばらくそうした沈黙の後、秋が口を開いた。
「向井さんに呼ばれて、家行った」
ふっと顔を上げ、春が秋を見たのが分かる。
しかし、秋はそんな春のことを見れずにいた。
「春が言ったようにちゃんとマネージャーさんと行った。けど、部屋に俺だけ呼ばれて、それで…その」
春は黙ったまま、話を聞いている。
ふと秋が春に目をやると、春はこちらを向いたまま、じっと固まっていた。
ふう、と息を吐き、秋は春に尋ねた。
「春も、ああいうこと、向井さんからされたことあるの?」
春は何も答えない。
秋は続けた。
「俺は、春がもし、同じようなこととか、それよりもっと、何か…されたんじゃないかって、それがすごい嫌で」
「…そっか ごめんね」
静かに春がつぶやくように小さく言った。
秋はなぜ春が謝るのか疑問に思い、尋ねた。
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