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第18話-7 壱川春
秋が好きだと示してくれるたび、春は心底怖かった。
いつ秋がそうじゃないと気付いてしまうか、怖かった。
それでもこの場所に長くいたい、そんな欲が出た。
自宅に誘われ足を踏み入れた後は必ず、手に入れた幸福感の倍の虚無感に襲われた。
何をやってるんだろう。
早くこの場所から自分が去らないと。
秋の時間をただ無闇に奪って、ただ秋の好意に、優しさに縋っていてはだめだ。
だめだ、だめだ、そう思っていたのに、最後には突き放すことを決めているのに、春は秋を試すようなことをした。
知りたかった。
確かめたかった。
自分に触れても、
秋は離れていかないんじゃないか。
__「キスされるのかなって」
___「していいの?」
後悔した。
秋の唇が触れた時、感じたことのないほどの熱を感じた。
触れたい、触れて欲しい、抱きしめたい、抱きしめて欲しい。
押し込めている欲が、溢れてくる。
もう戻れない。
そう思った。
秋が向井の話を持ち出した時、春はゾッとした。
向井と自分は、同じだ。
向井に触れられて秋は嫌だと思ったのだ。
消えてしまいたい、と思った。
秋はまだ気付いていないのだ。
気付いていないだけなのだ。
きっと、きっと、そうなのだ。
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